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2024.07.23 保育施設でBCP策定が努力義務化!導入メリットや策定手順を解説

保育施設でBCP策定が努力義務化!導入メリットや策定手順を解説

BCP(事業継続計画)は、自然災害や感染症が発生した際に利用者の安全を守り、必要なサービスを継続するための重要な計画です。これまで医療機関や一般企業、介護施設などでBCPの策定が進められてきましたが、2023年4月からは保育園などの児童福祉施設でもBCPの策定が努力義務化されました。今回は、保育施設でのBCP策定が努力義務化された背景やそのメリット、具体的な策定手順について解説します。

保育施設のBCPが努力義務化された経緯は?

2023年4月1日から、保育所を含む児童福祉施設等において、BCP(事業継続計画)の策定、研修・訓練の実施、定期的なBCPの見直しが努力義務化されました。

共働き世帯の増加に伴い保育所のニーズが高まる中、自然災害や感染症の発生時にも保育所の事業継続が求められることが背景にあります。行政はBCP策定を推奨しており、2017年に災害拠点病院に、2021年に介護サービス事業者に対し、BCP策定の義務化方針が出されました。

そして2023年、保育所に対しても、BCP策定が努力義務化されることとなりました。少子化の進行や保育士の待遇問題等、保育業界を取り巻く環境が厳しい中でも、いつ起こるかわからない自然災害への対応体制の構築は、園児や職員の生命を守るために不可欠とされています。

保育施設のBCPはなぜ必要?

保育所が災害等で機能停止してしまうと、園児の安全が脅かされるだけでなく、保護者が仕事を休まざるを得なくなり、社会活動や経済活動に大きな影響が出ます。

2021年度の保育所等利用児童数は274万人にのぼり、もしもの際に保育所が機能しなくなれば、多くの保護者の社会活動が中断され、社会全体に大きな損失が生じることは容易に想像できます。だからこそ、保育士の仕事は保護者や子どものためだけでなく、日本全体の経済を支えている重要な役割を担っているといえます。

日本の未来を担う子どもたちの命を守り、保護者の社会活動を支えるためにも、保育所の事業継続は必要不可欠です。

努力義務化に従わない場合に想定されるリスクは?

保育施設のBCPは努力義務化されており、それに伴う罰則はありませんが、策定しない場合には次のようなリスクが生じる可能性があります。

  • 園児の安全が脅かされるリスク
  • 保育士の安全配慮義務違反
  • 保育所の信頼低下

園児の安全が脅かされるリスク

BCPが策定されていないと災害時に適切な対応ができず、園児が負傷したり、最悪の場合には死亡につながる可能性があります。

保育士の安全配慮義務違反

BCPを策定せず、災害時の対応を怠ったために園児が被災した場合、保育士の安全配慮義務違反が問われる可能性があります。実際に東日本大震災では、安全配慮義務違反が認定された裁判例もありました。

保育所の信頼低下

災害後の保育再開が大幅に遅れたり、適切な対応ができなかったりすると、保護者や地域からの信頼が失墜し、ゆくゆくは園児数の減少につながる恐れもあります。

これらのリスクは、保育所の存続にも関わる重大な問題です。BCPの策定は施設の責務であり、園児と保育士の安全、保育施設の信頼を守るために不可欠な取り組みといえます。

保育施設でBCP対策を行うメリットは?

保育施設がBCPを策定することでどのようなメリットが得られるのか、運営や事業の継続、そして安全性の確保といった観点から紹介します。また、これらのメリットを十分に享受するためには、BCPの策定と定期的な見直しが欠かせません。

  • 園児と職員の安全確保
  • 保育の継続
  • 保育施設の信頼向上
  • 法的責任のリスク回避

園児と職員の安全確保

BCPを策定して定期的な訓練を行うことで、災害時に園児と職員が適切な行動をとることができます。

これにより、怪我や事故のリスクを最小限に抑え、園児と職員の安全を確保することができます。

保育の継続

BCPがあることで、災害後も保育を継続するための手順や体制が整います。

これにより、保護者が園児を預けて仕事を続けることができ、社会活動や経済活動への影響を最小限に抑えることができます。

保育施設の信頼向上

災害後の迅速な保育再開や、園児の安全確保への取り組みで、保護者や地域からの信頼を得ることができます。保育施設の評判を高め、園児数の維持や増加につながる可能性もあります。

法的責任のリスク回避

適切な対応を行うことで、災害時の安全配慮義務違反などの法的責任を問われるリスクを回避できます。

保育施設のBCP作成時に注意すべきポイント

保育施設でBCPを作成する際に、最優先しなければならないのは園児の安全と保護です。ここでは、BCP作成時に注意したいポイント6つを紹介します。

  1. 園児の安全確保を最優先に
  2. 保育の継続と早期再開を目指す
  3. 保護者や地域との連携を図る
  4. 職員の安全と健康管理に配慮
  5. 多様な災害リスクを想定する
  6. 定期的な訓練と見直しを行う

1.園児の安全確保を最優先に

避難経路、避難場所、園児の引き渡し方法など、園児の安全に直結する事項を詳細に定め、全職員がそれを理解し、園児の安全確保を最優先できるようにします。

また、園児の発達段階や個別のニーズに配慮した対応方法も盛り込む必要があります。

2.保育の継続と早期再開を目指す

災害時でも保護者の就労を支え、社会の機能を維持するために、できる限り保育を継続することを目指します。

そのために、非常用物資の備蓄、代替施設の確保、職員の参集方法など、保育継続に必要な事項を具体的に定めて、被災後の施設の早期復旧と保育再開に向けた手順も考慮します。

3.保護者や地域との連携を図る

災害時の園児の安全確保や保育の継続には、保護者や地域の協力も不可欠です。

平時から保護者や地域との信頼関係を構築し、災害時の連絡方法や協力体制について合意形成を図ります。また、BCP策定後は、保護者や地域への周知と理解促進に努めます。

4.職員の安全と健康管理に配慮

園児を守る立場である職員の安全と健康管理にも十分配慮しましょう。

職員の参集方法や役割分担、休憩・交代要員の確保など、職員の負担軽減と健康管理に関する事項を定めます。また、職員の家族の安否確認や、被災した職員への支援方法についても検討しましょう。

5.多様な災害リスクを想定する

地震、津波、洪水、土砂災害など、保育施設が直面し得る多様な災害リスクを想定し、それぞれに対応したBCPを策定します。

地域の災害リスク情報を収集し、施設の立地や構造を考慮した上で、具体的な対応手順を定めましょう。

6.定期的な訓練と見直しを行う

BCPの実効性を確保するためには、定期的な訓練と見直しが不可欠です。

年間計画に基づき、避難訓練、引き渡し訓練、通信訓練など、さまざまな訓練を実施し、訓練の結果を踏まえ、BCPの内容を点検・評価し、必要な見直しを行います。また、職員の入れ替わりや施設の変更などに応じて、BCPを適宜更新していくことも大切です。

保育施設のBCP計画の策定手順

保育施設でBCPを策定する際の手順について紹介します。大きな流れは次の1〜5になります。

  1. 自園における優先業務の把握
  2. 必要な資源の洗い出し
  3. リスクや被害の想定
  4. 復旧時間の目標設定
  5. 対応手順の策定

保育施設のBCP策定は、厚生労働省が配布している「児童福祉施設等における業務継続計画のひな形」を活用するのもおすすめです。

1.自園における優先業務の把握

さまざまな業務の中から、緊急事態発生時に継続すべき優先業務を選定します。子どもの人数や年齢に応じて優先業務は変わるため、自園の状況を確認し、優先順位を決めましょう。

2.必要な資源の洗い出し

人材、データ、資金、施設など、優先業務の継続に必要な資源を洗い出します。緊急事態発生時の対応人数、データのバックアップ状況、非常用電源の有無などを確認し、必要な備品の数量も把握しましょう。近隣の保育園との連携も重要です。

3.リスクや被害の想定

自然災害や感染症によるパンデミックなど、起こり得る緊急事態を想定し、それによる施設や設備、インフラへの影響、子どもや職員への影響などを具体的にイメージします。過去のデータを参考にするのも一策です。

4.復旧時間の目標設定

緊急事態発生から、ライフラインの復旧や必要な職員数の確保などの目標復旧時間を具体的に設定します。復旧の遅れは事業継続を困難にするため、現実的な目標設定が重要です。

5.対応手順の策定

想定したリスクや被害を踏まえ、緊急事態発生から復旧までの対応手順を時系列で整理します。誰が何をするのか、役割分担を明確にし、具体的なアクションプランを策定し、定期的な教育訓練で手順の実効性を高めることも大切です。

近藤商会ではお客様の事業継続を強力にサポートさせていただくため、BCP策定コンサルティングサービスをご用意しております。

サービスの詳細はこちらをご覧ください。

まとめ園児や職員を守るため、保育施設もBCP策定を! 

園児と職員の安全確保、災害時の保育継続のためにも、保育施設のBCP策定は不可欠です。自然災害や感染症拡大などの緊急事態に備えるためにも、BCP策定に取り組みましょう。

近藤商会では、お客様の状況に合わせて、BCP策定支援を行っています。まずはお気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。

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